ライザップの仕事の原理は、自己実現の欲求をもつお客さんに寄り添い、承認欲求を満たしてあげながら「結果に責任をもつ」こと。なかなか大変な仕事だなと思いました。
DIME(ダイム) 2017年 11 月号を読みました。
中に、瀬戸健社長の「結果思考が日本と働き方を変えるキッカケになる」というインタビューが3ページにわたって載せられていました。
瀬戸社長のインタビューが読みたいと思っていたので、見つけられてよかったです。まだ昨年発売の雑誌なので入手可能です。全文をお読みになるとよいと思います。
インタビューを読んで、特に印象に残ったところを抜き書きします。私が知りたいのは、ライザップのトレーニング方法ではなく、ライザップの「原理」です。
マズローの欲求5段階説
インタビューの最初に、マズローの欲求5段階説が出てきました。そのまま読み飛ばすとそんなものかで終わってしまうのですが、ここはライザップを理解するための大切な部分だと、後でわかりました。
瀬戸健社長が話す。
「マズローの欲求5段階説ってご存じですか?」
人間はまず『生理的欲求』、次に『安全欲求』を満たしたいと願う。3段階目は、社会、家族などに帰属したいと願う『社会的欲求』。昭和の日本社会は、多くの庶民にこれを与えてきた。
「しかし4段階目、人に認められたいと願う『承認欲求』や5段階目の『自己実現の欲求』はどうでしょう?これが完全に満たされている方は今も少ないんじゃないでしょうか?」
昭和後期、バブルの時代には高級車やブランドものの時計やバッグにお金を投じる人も多かった。
「しかし4~5段階目は結局、物質によっては満たされないんです。そして、我々のビジネスは、ここにコミットしているんです」
考えてみれば、SNSの流行も『承認欲求』と関連があるのかもしれない。ライザップのビジネスの成功は『承認欲求』と『自己実現』を満たすシステムをつくったことにあったのだ。
取材して記事を書いた方は、承認欲求をSNSと関連づけて書かれていました。昔、20年くらい前にPCが普及し始めてから時代が変わり始めましたが、数年前にほとんどの人がスマホを使うようになってから、さらに大きく変わったように感じています。
人の興味がひどく分散するようになりました。
毎日話している会社の同僚でも、仕事以外の話が共有しにくくなってきています。そして、高度情報化時代、みな一様に自分のことに忙しいですから、自分に必要以外のことまで聞いてあげようという気持ちは持ちにくくなっています。
このように、身近な他人とも共感しにくい時代ですから、周りの人に認められたいという承認欲求をなかなか満足させられません。それでSNSなどで同じ趣味趣向を持つ人と知り合って仲間を増やしていくのでしょう。
マズローの欲求5段階説について、承認欲求と自己実現について調べてみると、ウイキペディアに自己実現理論として記事がありました。
承認欲求
承認(尊重)の欲求 (Esteem)
自分が集団から価値ある存在と認められ、尊重されることを求める欲求。尊重のレベルには二つある。
低いレベルの尊重欲求は、他者からの尊敬、地位への渇望、名声、利権、注目などを得ることによって満たすことができる。
マズローは、この低い尊重のレベルにとどまり続けることは危険だとしている。
高いレベルの尊重欲求は、自己尊重感、技術や能力の習得、自己信頼感、自立性などを得ることで満たされ、他人からの評価よりも、自分自身の評価が重視される。この欲求が妨害されると、劣等感や無力感などの感情が生じる。
他人に認められたいという承認欲求の次に、自分で自分を認める承認欲求を求めるようになるのはよく分かります。
さらに自己実現についてはこのように書かれていました。
自己実現
自己実現の欲求 (Self-actualization)
以上4つの欲求(引用者注:生理的欲求、安全欲求、社会的欲求、承認欲求のこと)がすべて満たされたとしても、人は自分に適していることをしていない限り、すぐに新しい不満が生じて落ち着かなくなってくる。
自分の持つ能力や可能性を最大限発揮し、具現化して自分がなりえるものにならなければならないという欲求。すべての行動の動機が、この欲求に帰結されるようになる。
学校を卒業して働くようになると、他人の評価や地位が収入に反映されます。他人の評価や地位が上がることは嬉しいことですが、「それだけじゃないよな」というのは誰でも思っていること。
自分のやったこと、やってきたことを自分自身で認められるようになると、心の底から満たされる気持ちになります。滅多にあることではありませんけれども。
ライザップは、承認欲求から自己実現の欲求を満たす仕組みを作ったということなのです。
結果にコミットする。
マズローの欲求5段階説の最終段階、自己実現の欲求を満たすには、何より結果が出なければ満たしようがありません。
結果を出すことと、結果を達成するまでの過程を共有する仕組みが、「結果にコミットする。」ことにあります。
ダイエットの方法は「誤解を恐れずに言えば、本に書いてある」らしい。受験勉強も参考書は千円程度で買える。それより『三日坊主で終わらせない』メソッドのほうがよほど難しい。
「でも世の中を見てみると、長続きさせるソリューションはどこにもなかったんです」塾も、ジムもそう。一緒に目標を決めてくれる人や、自己実現を応援し、日々の進化を喜んでくれる人がいるわけでなかった。
瀬戸が話す。
「僕自身は『プロセスも目的の一部』と考える癖があります。仮に20万円の時計が欲しくて、嫌だと思いながら必死で働いて買ったとしましょう。
これでは達成した時だけしか幸せではなく、きっと将来もっと高い時計が欲しくなるでしょう。
そうではなく、必死で何かに取り組むこと自体も目的の一部と考えるんです。『今日はこんなにがんばれた!』と幸福を見いだすと、人はがんばれるようになります。
がんばっている間も幸福、達成すれば幸福、次の目標ができても幸福になり、その向こうに自己実現という結果が出るのです」(中略)
CMでおなじみの「結果にコミットする。」は瀬戸にとって座右の銘のようなものでもある。(中略)
「トレーニングは手段で、お客様が求めているのは、痩せたいとか、理想的な体を手に入れたい、といった『結果』です」
そこで瀬戸は「トレーニングのやり方を教える」「ジムの機器を使ってもらう」といったことにお金をもらいたくない、と考えた。(中略)
『結果にコミットする。』とは言い換えれば、『顧客が求めているものを必ず提供する』という、気持ちそのもの。
真摯にその想いを抱き、それを実現できる者だけが、本物のプロフェッショナルだと私は考えています。
結果を出さなければお金をもらうに値しない―そう考えレッスンプロとプログラムを作り実施すると、今度はトレーナーが『なぜ今まで漫然と教えていたのか』『なぜ今までお客様の結果にコミットしなかったのか』と変わってきた。
「本来は顧客が求めているものを提供すべきで、『結果思考』をする人こそが、本物の『プロ』です」
そして、現在までこのビジネスはなく、受験や社員教育など、教育が必要な分野、すべてに応用可能。だから瀬戸のビジネスは「日本を変える可能性がある」とまで言われているのだ。
「改めてそう言われると恐縮ですが(苦笑)、我々が『人は変われる、一生輝けることを証明したい』と考えていることは事実です」
今まで、テレビCMで「結果にコミットする」と繰り返し聞いても単なる広告コピーにしか聞こえていませんでした。
しかし、インタビューを読むと違います。これはなかなかすごい宣言ですね。
結果に責任をもつ
「トレーニングのやり方を教える」「ジムの機器を使ってもらう」といったことにお金をもらいたくない、に加えて、「結果にコミットする」ですから。
「commit」とは、辞典で調べると、「~に責任を持つ、~と約束する、~を誓う、~を明言する」と書かれていました。
つまり、「結果に責任を持つ」という宣言なんです。
同じ目標を口にしても、すべての人がそれを達成できるわけではないことはよく分かっています。たいていの人が、それを最初に経験するのは入学試験でしょうか。
それが常識の世の中で、あえて、「結果に責任を持つ」と宣言すると、それは相当に覚悟がないとできないことです。
自己実現の欲求を満たしたいと考えるお客さんに寄り添い、「結果に責任を持つ」のですから、ライザップの仕事の原理は、なかなかすごい。
まとめ
男性はある年齢を超えると、仕事が生活の大部分を占め、それ以外のことを軽視しがちになります。「仕事が忙しいから」で流してしまうようになります。
誰もが口にした目標を達成できるわけではないという世間の常識の中で、あえて、結果にコミットする。つまり、「結果に責任を持つ」と宣言しているのがライザップです。
宣言するだけなら簡単ですが、実績が伴わなければ、すぐに悪い評判が立ちます。しかし、もう何年もインパクトのあるCMが流れているのですから、成果が出ているのでしょう。
きっと社員の方の仕事も大変だろうなと想像します。これからそれも調べていきましょう。